解決事例

≪解決事例を更新しました≫「使途不明金がある遺産分割の事例(不当利得返還請求ないし特別受益の問題)」

使途不明金がある遺産分割の事例(不当利得返還請求ないし特別受益の問題)

(事案)

依頼者であるXさんの父親のAさんは、妻に先立たれた後、長年二男(Xさんの弟)のYさん家族と同居して生活していました。

今回、Aさんが亡くなり、その法定相続人は、長男であるXさん、二男であるYさんの2人です。

XさんはYさんと遺産分割協議をしようとしましたが、Yさんから開示されたAさんの遺産の合計額は、Xさんが想定していたよりも少ないものでした。

具体的には、Aさんの預貯金の残高は、僅か数万円になっており、長年大手企業に勤務し、リタイア後は贅沢な暮らしをすることなく、質素に年金生活を送っていたAさんの預貯金としては少なすぎると感じました。

そのため、Xさんは、YさんがAさんの預貯金を使い込んだのではないかと疑い、当事務所にご相談に来られました。

(ポイント)

被相続人の預貯金の取引履歴は、過去10年間に遡って取得することができます。

今回、Aさんの預貯金の取引履歴を取得したところ、Aさんの亡くなる半年ほど前から、100万円単位で立て続けに現金が引き出されていること(使途不明金)が判明しました。

そこで、弁護士を通じて、Yさんに対し、この使途不明金の使途について説明を求めるともに、説明ができないのであれば不当利得として返還するよう求めました。

なお、この使途不明金を、Yさんが私的に使い込んだのであれば不当利得返還請求の問題、YさんがAさんから生前贈与を受けていたのであれば特別受益の問題となります。

(結論)

Yさんは、任意交渉では使い込みを否定し、本件は訴訟手続に移行しました。

こちらでは、預貯金の取引履歴ともに、Aさんのカルテ、看護記録、介護記録も取得しました。これらの記録によると、Aさんは亡くなる半年前から、一人で外出できる状態ではなく、施設でほぼ寝たきりの状態であったことが判明しました。

現金を引き出したのがAさんではなくYさんである以上、Yさんにはその使途を説明する義務があります。

しかしながら、Yさんは、使途の大半を説明することができず、私的に流用したことを事実上認めました。

その結果、使途不明金の大半を遺産に持ち戻すことで和解が成立しました。

(コメント)

今回のケースでは、Yさんが私的に流用したことを事実上認めたため、その大半を遺産に持ち戻すことに成功しましたが、私的に流用したことの立証責任は原告であるXさんにあります。

そして、相続開始後に、特定の相続人の私的流用を立証することは難しいケースがあるのも事実ですので、生前の対策として、特定の相続人に財産管理を委ねないことをお勧めします。