弁護士コラム

医療事故において警察の有する司法解剖写真は民事訴訟に提出しなければならないという最高裁判決が出ました

【判例】
医療事故訴訟で死因立証に使うため、警察が保管している司法解剖の写真を提出させるよう遺族が求めた裁判の決定で、最高裁第3小法廷(林道晴裁判長)は「司法解剖の写真は民事訴訟法上、遺族への開示が義務付けられる文書だ」との判断を示し、警察に提出を命じた札幌高裁決定を支持した。24日付。裁判官5人全員一致の結論。

司法解剖の写真は刑事事件の捜査資料に当たり、民事訴訟の立証のための開示はハードルが高かった。今回の決定は、民事訴訟で医療事故などの真相究明を目指す当事者を後押しする司法判断と言えそうだ。

決定などによると、提出命令を申し立てたのは札幌市の女性。父親が市内の病院で転倒して亡くなった事故を巡って病院側に損害賠償を求めて提訴し、死因立証のため、北海道警が保管している司法解剖の写真を提出させるよう求めていた。

民事訴訟法は「刑事訴訟に関する書類」の提出は拒むことができると規定する一方、立証しようとする側と文書所持者との間で法的に関わる文書は、提出を義務付けている。

第3小法廷は決定で、司法解剖の資料は刑事訴訟に関する書類と認定しつつ、女性には「父親の遺体が解剖で不当に傷つけられないことについて法的利益がある」と指摘。写真は、解剖が適正に行われたことを示す資料にもなることから、女性の利益侵害の有無という法律関係を明らかにする面もあるとして、提出が必要な文書に当たると結論付けた。〔共同通信〕

【解説】
医療事故案件では、「不審死」として司法解剖がなされることは稀ではありませんが、今迄は警察が保有する司法解剖の写真は、民事訴訟の当事者(遺族)には開示されてきませんでしたが、この度の最高裁判決で、事実上開示が義務づけられる事になりました。民事訴訟の証拠の可能性が一つ広がった画期的判決だと言えます。