Q&A
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現在医療訴訟が判決となった場合、患者側の請求が認容される勝訴率は20%程度で、決して高くありません。但し、医療訴訟のうち判決になるのは35%で、50%は和解となります。和解では、金額は少ないとしても一定の金銭は支払われる事が通常です。又、医師・医療機関の過失が明らかな事案では、そもそも裁判になる前に示談で決着がつく場合もあります。
従って、きちんと事案を検討して、適切な対応を行えば、医療訴訟の勝訴率は非常に低いという事ではありません。
賠償金額は、①医師・医療機関側の過失がはっきりしている ②患者さんが若く(余命が長く)、収入が多い(逸失利益が多い)場合に高額になります。①②がそろった場合に、1億6,000万円の賠償が認められた例があり(大阪地方裁判所 平成15年(ワ)第4032号)、当事務所では、20代の女性で6,700万円、60代の男性で介護費用等を含めて6,300万円の賠償が認められた事案があります。 但し、この様な高額の賠償が認められる事案は必ずしも多くなく、100~300万円で和解することも比較的多くあります。 これらの違いは、上記の①②の違いによって生じますので、事前に事案を十分に検討する事が重要です。
当事務所では訴訟の場合、着手金50万円、成功報酬30%を頂いております。この他に、請求額に応じた印紙代、交通費、意見書費用、鑑定費用などがかかります。成功報酬は勝訴した時に医師・医療機関から受け取る額の30%の割合をいただくもので、直接お支払いして頂く必要はありません。ざっとした計算として、100~120万円+成功報酬として医師・医療機関から受け取る額の30% が費用になります。
従って、基本的にはこの金額以上の損害賠償を見込める事案について、医療訴訟を提起する事が合理的選択になります。
患者側である原告が訴状を裁判所に提出すると(訴訟提起)、裁判所と原告で日程を調整の上、1月半~2か月後に第1回の口頭弁論期日が設定されます。期日が決まると訴状が被告である医師・医療機関に送達されます。被告は、第1回期日の1週間前までに答弁書で回答しますが、多くの場合、「請求の棄却を求める。理由は追って述べる。」という形式的な答弁がなされます。また被告は第1回の期日は欠席が許されます(第1回の期日の日程は原告と裁判所だけで決められているためです。)。
被告の実質的な反論は2回目の期日(通常弁論準備期日となります)において提出される準備書面でなされ、これに対して1月半~2月後に設定される第3回期日で原告が反論し、以下、順原告、被告の主張と反論が繰り返されます。この間に、原告、被告は、自らの主張を整理し、これを補強する文献、意見書を提出します。相互の主張が出尽くしたところで、争点の整理がなされ、証拠調べがなされます。証拠調べでは、被告である医師の当事者尋問、意見書を提出した医師の証人尋問がなされます。患者さん、ご家族が尋問の対象となるかどうかは事案によります。
場合によっては証拠調べの後、裁判所が選任した中立の医師による鑑定がなされます。
鑑定費用は通常50万円程度で、判決によって原告、被告のどちらが負担するか決まります。
これらがすべて終わった後、裁判所は、全弁論、全証拠を考慮して判決を下します。
尚、判決となるのは全裁判の35%であり、50%は和解で終結します。和解が裁判所から提示されるタイミングは事案によりますが、争点整理が終わり、証拠調べに進む前になされるのが通常です。
医療訴訟において、医師・医療機関の過失の特定と、過失と損害の因果関係の立証は正に争点の中心ですが、その立証には高度の専門知識を要すると同時に、「証拠」が必要です。当事務所では医師・医学博士である弁護士が訴訟に当たっており、専門知識についてはカバーできます。しかし「証拠」については、例えば手術ミスが疑われる場合でも、手術の現場をそのまま映した動画の様な記録は存在しない事がほとんで、事実上「カルテ(手術記録、麻酔記録、看護記録を含む)」が、唯一の証拠であり、そこにミス若しくはミスを疑わせる記載がなければ手術ミスという過失を特定し、立証することはそう簡単ではありません。又、仮に手術ミスが見つかったとしても、賠償が認められる為には、手術ミスという過失がなければ患者さんが助かったという因果関係の立証も必要なのですが、手術ミスがなかった場合どうなるかを患者さんで実験してみるわけにもいかず、その立証も決して容易ではありません。
この様に、患者側が過失、因果関係を厳密に特定・立証する事は性質上困難なのですが、判例は、「一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明する」(最高裁昭和50年10月24日判決)事で足りるとしています。
その後更に、「適切な検査,治療等の医療行為を受けていたならば,患者に上記重大な後遺症が残らなかった相当程度の可能性の存在が証明されるときは,医師は,患者が上記可能性を侵害されたことによって被った損害を賠償すべき不法行為責任を負うものと解するのが相当である。」(最高裁平成15年11月11日判決)との判例が出ています。
また、「十分な患者管理の下に診察・診療をしてもらえるものと期待していた患者にとってみれば、その期待を裏切られたことにより予期せぬ結果が生じたのではないかという精神的打撃を受ける事も必定と言うべく、右に言う患者の期待は、診療契約において正当に保護されるべき法的権利と言うも過言ではない。」(福岡地裁昭和52年3月29日判決)との判決も出されています。この期待権は、最高裁平成23年2月25日の判決で著しく不適切な診療が行われている場合以外は否定されていると解するのが通常ですが、同時に「和解」を考慮する要素として事実上残っていると考えられます。
更に、期待権の侵害のみを理由とする不法行為責任を認めないものの、不適切な医療を、診療契約上具体的に発生した債務の不履行として損害賠償を認めた判例もあります(福岡地裁平成25年11月1日)。
過失の特定についても、概括的若しくは選択的特定で足る(最高裁平成21年3月27日判決)との判決があります。
これらの判例から、理論的ではありませんが、多数の医療訴訟を行ってきたざっとした感覚として、因果関係の立証には、1.厳格な証明 2.高度な蓋然性の証明 3.相当程度の可能性の証明 4.期待権の侵害程度の証明 の各段階があり、其々に応じて大体の賠償額が決まる(1.2なら、請求額相当、3.であると数百万円程度、4.では百万円程度)となっているように思えます。
従って、常に1.2.の因果関係の証明を行うことは難しいのですが、カルテ、医学文献等をよく検討する事で、どの程度の因果関係の証明が出来、どの程度の賠償が見込めるかについて一定の予想をする事は可能であり、3.4.の証明まで含めれば、因果関係の証明は必ずしも難しい訳ではないといえると思います。
事案によります。①医師・医療機関が過失を認めている。②求める賠償額がそれほど高額でない。場合は、医師・医療機関も比較的早期に示談に応じる可能性がありますので、まずは示談交渉を試みるのが良いと思います。①②のどちらかが満たされない場合は、医師・医療機関としては、任意の交渉に応じる動機が少なく、先ず示談交渉を試みる事は良いとして、交渉が進まなければ早期に断念して次の段階に移る事が勧められます。
調停は裁判所の関与の下で、ADRは弁護士会の関与の下で第三者を介して話しあいを行うものです。最初から話し合いそのものを目的としている場合や、大枠としての話し合いはできているけれど金額だけが問題である場合などは使っても良いのですが、強制力のない話し合いは結局のところ示談交渉と大差なく、示談の進展が見込めない状況で、賠償・解決を望むのであれば、躊躇せず裁判に進むことが勧められます。
裁判は、時間と費用がかかり、敗訴のリスクもありますが、それらは事前にカルテ、医学文献等を検討する事で予想することができます。又よく検討したうえで一定の勝算を持ってなされた訴訟では、請求額には満たないにせよ裁判所から一定の金額の和解を提示されることも多く、適切な和解によって金銭的な損害を回避することも可能です。
裁判になれば、必ずしも期待通りのものでないにせよ、訴訟の過程で事案の解明が進み、和解・判決で、一定の結論を得る事が出来ます。それは、患者様、ご家族にとって、医療過誤・医療訴訟を疑いながら結論の出ない状況で待ち続けるより、はるかに有益な事だと考えられます。
医師の謝罪を求める患者さん・ご家族は多いのですが、人に何かの行為を強制することは基本的に難しく、「謝罪させる」事は困難であると考えて頂くのが良いと思います。
「強制」ではなく、示談交渉で相互の合意ができれば謝罪を受ける事は可能ですが、それにはあくまで相互が任意に合意する必要があります。裁判となった場合は、和解が成立する時は、相互の合意で和解条項に謝罪文言が入ることがありますが、医師が実際に謝罪すること医師・医療機関が同意する事はまずありません。判決となった場合は、医師の謝罪が判決の内容となる事はありません。
高度な専門知識をもって、的確かつ迅速に、事案の判断ができる事です。勿論医師でない弁護士でも、医療訴訟の経験を積み、協力医の助力を得れば医療訴訟を行うことは十分に可能です。しかしその場合は、調査や協力医との連絡に多大な時間を要し、思った様には事案が進まないことがままあります。
また、多大な時間を要するという事は、それだけコストがかかるという事であり、調査の段階からはじまり、一つ一つのステップごとに極めて多額の費用がかかる事にもなりかねません。
当事務所では、医師・医学博士である弁護士が、高度な専門知識をもって、的確かつ迅速に、事案の判断をし、患者さん・ご家族にその見通しを伝えた上で、一つ一つのステップにおけるコストを最小限に抑えつつ、依頼者である患者様・ご家族にとって最善の解決を実現すべく全力を尽くします。
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