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賃貸経営においてオーナーを最も悩ませる問題が、賃料不払い問題です。近時では家賃保証会社による機関保証のシステムも定着してきましたが、そういった確実な保証人がいない場合には、賃料の不払いは賃貸人様の収入の減少にダイレクトにつながる死活問題となってしまいます。
また、賃料の支払いに遅れはないものの、他の入居者が引っ越しの検討までせざるを得ないような迷惑行為を継続する入居者がいる場合には、経営がままならず、収支を圧迫する悩みの種となります。
さらに、建物が築年数を重ね老朽化が著しくなり、倒壊の危険性が出てきた建物を建て替えたいという場合には、入居者の数が多ければ多いほど、退去交渉には手間と時間がかかることになります。
当事務所では、賃貸経営に関するあらゆるトラブルに幅広く対応し、質の高いリーガルサービスを提供しております。
賃料を滞納している賃借人がいるが、賃貸借契約を解除せずにひとまずは滞納状態の改善を目指したいという場合には、賃料の支払いを求める内容証明を送付することが効果的です。
内容証明郵便は、いつ、どのような内容の書面が、誰から誰宛てに差し出されたかという事実を、日本郵便株式会社が証明する制度です。滞納者に対する支払請求を内容証明郵便によって行う目的には、消滅時効期間の進行をひとまず止めるという法律的な側面と、滞納者に心理的な圧迫をかける(このままだと大家さんが法的手段に出てくるかもしれないと思わせる)という側面があります。
内容証明を送っても滞納者から反応がない場合には、滞納賃料回収のための法的手続を検討することになります。たとえば、滞納者に支払いを求める裁判を起こし、滞納者に対する支払いなさいという裁判所の命令(判決)が確定すると、滞納者の財産を差し押さえて、そこから強制的に支払いに充てさせること(強制執行)ができるようになります。
強制執行は、確定判決のほか、仮執行宣言付判決、仮執行宣言付支払督促、執行証書( 公正証書) 、簡易裁判所で作成される和解調書等によってもすることができるので、滞納者の状況を見ながら、最も簡易迅速で効果的な法的手続を選択することが重要です。
訴訟(裁判)ではない比較的手軽な法的手段です。管轄の簡易裁判所の書記官に支払督促を申し立てると、裁判所書記官が申立てに基づいて、債務者(滞納者)に対し、支払督促(支払いなさいという命令)を発付してくれます。
支払督促が滞納者に送付されてから2週間を経過しても異議申立てがないときは、さらに支払督促に仮執行宣言を付けてくれるよう申立てをします。
この仮執行宣言が付けば強制執行ができるようになりますが、滞納者から異議の申立てがあった場合には、訴訟(通常訴訟)に移行します。
債権額が60万円以下の金銭支払請求に限って利用できる裁判手続です。滞納者の住所地を管轄する簡易裁判所に訴状を提出し、原則として1回の期日で審理が終了して、口頭弁論終結後直ちに判決が言い渡されます。
通常訴訟は、一審を簡易裁判所または地方裁判所で行う一般の民事訴訟であり、支払督促に異議が出されて移行するルートと、最初から通常訴訟を提起するルートがあります。通常訴訟には手間もかかりますので、最初から提訴する場合には、賃料等の滞納額及び強制執行できる財産の有無等とのバランスを充分に検討する必要があります。
しかし、通常訴訟では、裁判所が間に入って、滞納者が無理なく支払える範囲で分割払いの和解を組むということもできますので、債権回収の実効性を高める柔軟な解決も可能です。
もし、滞納者と裁判所外で話し合いをすることができる状況であれば、今後の賃料の月々の支払いの約束と滞納分の分割払いの約束、そして、「約束した支払いがなされずに未払合計額が〇〇円に達した場合には賃借物件を明渡す」といった約束を盛り込んだ和解条項をもって、管轄の簡易裁判所で即決和解を成立させることもできます。
滞納者と事前に合意を形成し、和解期日に双方が裁判所に出頭しなければならない点でややハードルは高いですが、過去の滞納賃料の支払い約束のみならず、将来において一定額の不払いが発生した場合には、強制力をもって明渡法的手続ができることになる点で、賃貸人側のメリットは大きいといえます。
賃料を支払わず、それでいて自主退去の意思もないような賃借人がいる場合には、賃貸借契約を解除した上で、明渡しのための法的手続をとっていくことになります。明渡しのための法的手続とは、大きく分けて、明渡訴訟と明渡強制執行のことをいいます。
当事務所には、賃貸借契約の解除から明渡強制執行の完了までを最短で進める手続ノウハウ、明渡しのための法的手続を並行させながら自主退去の方向に向かわせる交渉ノウハウが豊富に蓄積されています。
民法における原則では、債務者に債務不履行がある場合には、債権者が一定期間を定めて催告してもなお債務が履行されない場合に、契約を解除できるものとされています。
しかしながら、特に住居の賃貸借契約においては、賃借人が借りている住居を強制的に追い出されることになった場合には、生活の本拠を失い、暮らしの安全が脅かされるという特に考慮しなければならない事情があることから、通常の契約と比較して、裁判所は賃借人を厚く保護する傾向にあります。
そこで、判例では、賃借人に債務不履行があり、その程度が賃貸人と賃借人との間の信頼関係を破壊したとまでいえる状態に至った場合に、賃貸人からの賃貸借契約の解除が認められるとされています。
賃料を支払うという債務は、賃借人の義務のうち何より中心的な柱ともいえますが、それではどの程度の滞納があれば、信頼関係が破壊されたと認められることになるのでしょうか。実は、民法や借地借家法をはじめとするどの法律の条文にも、「〇か月以上賃料を滞納した場合には、賃貸人は契約解除することができ、賃借人は借家を明け渡さなければならない」というような規定はありませんが、一般的に、明渡しの裁判となれば、3か月以上の賃料滞納がある場合は賃貸借契約の解除が認められるケースが多いといえます。
もちろん、ケースにもさまざまなものがあり、賃料滞納以外にも用法違反や迷惑行為も合わせて存在する場合や、賃料がきわめて高かったり逆に安かったりする場合には、滞納期間としては1 か月で解除が認められることもあれば半年以上必要とされることもあります。しかし、賃料の滞納のみを解除原因とする場合は、一般論として、3か月滞納というのが1つのラインとなるといえるでしょう。
賃貸借契約が解除された場合には、賃借人がその建物(部屋)に住む法的根拠を失うことになりますので、いわゆる不法占有の状態になります。よって、賃貸人は賃借人に対して、賃貸借契約が終了したことを理由とする建物明渡請求訴訟を提起することができます。
裁判では、被告の知らないうちに判決が出てしまうことがないよう、裁判所は、原告が求める裁判やそのための主張を記載した訴状という書面を被告にきちんと届けること(「送達」といいます。)について、慎重に慎重を重ねて、細心の注意を払うことになります。
しかし、明渡訴訟では、被告がすんなりと訴状を受け取ってくれることは少ないといえます。賃料の滞納を重ねていながら住み続けているやましさを自覚してあえて受け取らない場合もあれば、夜逃げして行方不明となり、現実的に訴状を受け取ることができない場合もあるでしょう。
そのような場合に裁判ができないとすると、原告である賃貸人に大きな不利益となってしまいますから、被告の仕事場所が分かれば訴状は仕事場所へ送達され(就業先送達)、仕事場所が不明でも所在が判明していれば書留郵便で送達され(付郵便送達)、被告が受け取っても受け取らなくても送達済として扱われるという制度があります。
また、被告の行方が分からない場合、裁判所の建物の前にある掲示板等に訴状その他の送付物を掲示する方法により、送達したものとみなす制度もあります(公示送達)。
いずれにせよ、被告が訴状を受け取らない場合には、被告の状況を迅速に調査した上でどの送達方法をとるのがふさわしいかを的確に判断し、裁判所へ説得的に報告することが重要です。
賃料の滞納による解除を原因とする建物明渡請求訴訟においては、原告が賃料の滞納の事実等を主張立証し、被告はこれに対する反論をすることになります。被告が裁判に出頭しなかったり、賃料の支払を立証できなかった場合には、建物を明け渡すよう命じる判決がなされることになります。
また、判決ではなく、期限その他の条件を定め、任意に退去する旨の和解がなされることで終了するケースも少なくありません。
明渡判決が確定したり、確定していなくても明渡判決に仮執行宣言が付いている場合、また、和解はしたが和解条項に定めた約束を被告が守らずに明渡すべきこととなったような場合で、その段階まで至っても被告が自主退去しないときは、執行文や送達証明、確定証明といった必要書類を揃えて、管轄の地方裁判所へ、明渡強制執行を申し立てることになります。
強制執行は、執行官という裁判所職員が担当します。執行官は、不動産の明渡強制執行の申立てがあった日から2週間以内に明渡しの催告を実施します。
明渡しの催告とは、賃貸物件に執行官らが赴いて、執行官がその権限で室内に入り、債務者(占有者)が占有していると認定した上で同人に対して明渡しの強制執行(断行)の予定日を告知し、「転居先を見つけて○○日までに退去してください。そうされない場合には強制執行となってしまいますよ。」などと伝えて断行日までに任意に明渡すよう促す執行官の処分行為をいいます。
実際には、口頭での伝達のほか、執行官が物件内部に公示書(明渡しの催告をした旨や、物件の引渡期限等が記載された書面)を掲示し、債務者に催告書(断行予定日や連絡先等を記載した書面)を手渡すことで催告が行われます。なお、断行予定日は、催告の日から1か月後を期限として、債務者の状況に応じてその期限内の日で指定されますが、夜逃げしたことが明らかであるような場合には、即日断行となるか、催告日から近い日が断行予定日とされることもあります。
明渡しの催告を行うと、催告の日から引渡期限までの間に占有者が代わったとしても、その代わった占有者に対しても明渡強制執行(断行)を行うことができるようになります。
明渡強制執行とは、不動産の占有者に対し、強制的に占有を解いて債権者に占有を移させることをいい、断行と呼ばれます。場合によっては、断行予定日になっても債務者の居住が続いていることもありますが、多くの場合は、催告時には居住していても、催告後、断行予定日までには自主的に退去する債務者が多いといえます。
断行の際に、初めから行方不明であったり自主退去していたり等で債務者が不在の場合であっても、債務者の家財道具等の所有財産(「目的外動産」と呼ばれます。)が物件内外に残されていることがほとんどです。目的外動産は、執行官が運び出して保管することになりますが、夜逃げしたことが確実であるような一定の場合には、保管しないで即日処分することも認められています。
目的外動産を保管することとなった場合に、倉庫やコンテナ等の保管場所は債権者(賃貸人)側が用意する必要がありますが、断行日に明渡作業を実際に行うことになる執行補助者に依頼すれば用意してくれることがほとんどですので、事前に入念な打ち合わせをしておくことが必要です。
物件に目的外動産の保管場所と引渡期限が公示されるため、債務者がそれを見て引き取りに来る場合もありますが、一定期間に債務者が引き取りに来ない場合は、保管の日から1週間以上1か月未満の日を売却期日として定め、売却を実施します。
断行日に明渡作業が終了し、執行官が全ての目的外動産が搬出されたのを確認すると、物件の占有が債権者(賃貸人)に移転したとの認定がされます。その後、執行官が解錠技術者に指示して物件の鍵を交換し、物理的にも債務者が出入りできない状態にされ、明渡強制執行(断行)は完了します。
法的手続によらずに自身で明渡行為をしてはなりません
賃借人の賃料不払いが続けば、賃貸人様の収入の減少に直接的につながることになります。明渡訴訟や明渡強制執行といった明渡しのための法的手続を行うにも手間と費用がかかってしまう上、明渡しのための法的手続が完了するまでは次の賃借人にも貸せずに、賃貸人様には二重三重の経済的な損失が降りかかってくるともいえます。
そのような現実から、賃貸人様が賃貸借契約を締結した覚えもない不法占有者が居室に入り込んでいるような場合には、玄関ドアの鍵を替えて入れないようにしたいと思われたり、もう何か月も居室への出入りが途絶え、窓の外からカーテンの隙間を覗くとほんの少しの家財道具しかなく、おそらく夜逃げしたと思えるような場合には、法的手続をとることなく、賃貸人様ご自身で中の家財道具を処分して次の賃借人に貸してしまいたいと思われたりするのは、心情的にはやむを得ないことと思います。
しかしながら、賃貸人様が法的手続によらずにご自身でそのような明渡行為をしてしまうと、民事上のみならず、刑事上の責任を問われる可能性があります。
民事上の責任で申しますと、賃貸人様が賃料を滞納している賃借人の居室の鍵を勝手に交換する行為は、賃借人の居室の占有権の侵害に当たりますし、賃借人が不在にしていても居室内の財産は依然として賃借人の所有物ですので、勝手に処分してしまえば財産権の侵害に当たります。裁判所では、近時、こういった行為を不法行為と認め、賃貸人に対し損害を賠償せよとする判決が多く出ています。
また、刑事上の責任については、賃貸人様が賃貸物件の居室に無断で立ち入る行為は住居侵入罪に、居室内の家財道具等を無断で運び出したり処分したりする行為は窃盗罪や器物損壊罪に、鍵を交換したり占有者を脅して追い出す行為は不動産侵奪罪や強要罪・脅迫罪等に該当すると考えられ、刑事罰を受けることになる可能性もあります。
自分に権利があると考える人は自分で強制執行してよいということになれば、結局、腕力の強い者が勝つことになってしまいますが、これでは法治国家とはいえません。強制執行は誰でも勝手にしてよいものではなく、強制執行ができることを認めた公的な証明をもって裁判所に申し立て、執行官という公的な機関が行うものと法律で決められているのです。これを「自力救済の禁止」といいます。
自力救済は、きわめて例外的な場合には認められると考えられています。しかしながら、賃貸人様が不法占有や夜逃げの問題に直面された際には、法律に従って手続をしていかないと、民事上の損害賠償責任を負うだけでなく、刑事罰の対象にもなる可能性もあることをしっかりと認識され、法的手続による万全な解決を図られることを強くお勧めします。
居住用に限定するという目的でマンションの一室を貸したのに、賃借人がそこで勝手に学習塾を始めた場合や、玄関前の廊下にゴミを積み上げたり深夜に騒音を出したりして他の住人に迷惑をかけている賃借人がいる場合、そういった賃借人の用法違反や迷惑行為を理由として賃貸借契約の解除ができるのでしょうか。
この問題においても、裁判所は、賃料滞納の問題と同様に、用法違反や迷惑行為という賃借人の債務不履行の程度が、賃貸人と賃借人との間の信頼関係を破壊したとまでいえる状態に至った場合に、賃貸人からの賃貸借契約の解除が認められると考えています。
用法違反や迷惑行為の場合に解除が認められるかについては、用法違反または迷惑行為の性質・態様、建物自体に与える悪影響の程度、他の住人に対する迷惑の程度、賃料滞納がある場合にはその金額等の諸事情を裁判所が総合考慮して判断することになります。
賃料滞納のみを理由とする解除の場合であれば、もっぱら滞納期間(金額)が問題となり、支払ったことの立証は賃借人がすることになるのと比較すると、用法違反や迷惑行為の場合には、賃借人がどのような用法違反または迷惑行為をしているか、どのような事情があるから信頼関係が破壊されたといえるか等については賃貸人側が主張立証すべきことになりますので、訴訟の進め方としてはより戦略と配慮が要求されるといえます。
老朽化したアパートやマンションを建て替えるために賃借人に退去してもらいたい場合、賃料滞納等があり賃貸借契約を解除できる賃借人に対しては、賃貸借契約を解除した上で、必要であれば明渡法的手続を並行させてお話し合いを進めていくことができます。
一方で、賃料をきちんと支払っており生活態度にも問題がないような賃借人については、賃貸借契約を解除することはできませんので、賃貸借契約に期間の定めがある場合には更新拒絶の通知を、賃貸借契約に期間の定めがない場合には解約の申入れを行った上で、退去の条件等について丁寧にお話し合いを進めていくことになります。
借地借家法上、上記の更新拒絶や解約の申入れが有効であるかは、お話し合いがつかない場合には結局のところ、賃貸人と賃借人が建物の使用を必要とする事情、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況、建物の現況、賃貸人が提示したいわゆる立退料の額等を総合考慮して、裁判所が正当の事由があると判断するかどうかにかかってきます。
しかしながら、そのような裁判は長期化することが多いのが実情です。そのため、当事務所では可能な限り法的手続によることなく、蓄積されたノウハウによる迅速かつきめ細やかな退去交渉を行い、迅速かつ適切な解決を目指して対応させて頂きます。
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