賃貸経営に関する解決事例
アパート建替えのための退去交渉を行った事例
- 事案
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依頼者であるXさんは、都内に父親から引き継いだ古いアパートを所有していますが、アパートは築50年以上が経過して老朽化が進んでおり、建替えを検討しなくてはならない時期を迎えていました。
Xさんは、仕事の関係で関西に居住しており、またアパートの管理を地元の不動産業者に一任していることもあって、アパートの入居者とはほとんど面識がなく、自身で退去交渉を行うことは難しい状況でした。
Xさんとしては、アパートを建て替える前提として、6世帯いる入居者の方々に退去してもらうべく、当事務所にご相談に来られました。
POINT
建物賃貸借契約における賃借人は特別法(借地借家法、旧借家法)によって手厚く保護されていますので、賃貸人から一方的かつ強制的に退去を求めることはできません。
そのため、退去交渉では、一般的には立退料の支払を条件として、退去の合意を交わすことになります。
なお、立退料の相場は、転居に要する諸費用(引越費用、転居先の初期費用等)を含めて、賃料月額の3か月分から12か月分程度と言われています。
- 結果
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Xさんの依頼を受け、Xさんに代わって弁護士より、入居者に退去をお願いする内容の手紙を送付し、退去交渉を始めました。
6世帯のうち4世帯は、アパートが老朽化していることを理解してくれ、スムーズに退去に応じてくれました。
6世帯のうち1世帯は、弁護士に依頼したため、弁護士間で交渉を行いました。弁護士が入ってくると紛争となってしまうようにも思われますが、経験のある弁護士同士であれば、相場も、今後法的手続に移行した場合の見通しも共有できるため、かえってスムーズに話が進むことも少なくありません。今回の事例でも、入居者に弁護士がついたことにより、かえってスムーズに話が進み、相場通りの立退料で合意するに至りました。
残りの1世帯は、弁護士からの連絡を一切無視し、弁護士が現地を訪問すると数百万円単位の法外な立退料を要求してきました。残念ですが、入居者の中には、このようにたちが悪い入居者もいます。今回の事例では、任意交渉では話し合いが難しかったため、簡易裁判所に民事調停を申し立て、裁判所の仲裁のもと、妥当な金額で和解するに至りました。
民事調停まで含めると約10か月程度の時間を要しましたが、全ての入居者の退去が完了し、Xさんは無事にアパートを建て替えることができました。